塾の「中学入試合格者数」は水増し?ダブルカウント?

塾選びの指標として最も保護者の方が参考にされるのが、「塾別・中学校別の中学入試合格者数」です。特に上位校の合格者数は、塾のチラシやホームページなどでも毎年、大きくアピールされています。

これらの中学受験塾が発表する合格者数に「水増し」はないのでしょうか?

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水増しはないが、分かりにくい業界ルール

結論から申し上げますと、かなり昔の塾黎明期には中堅塾などでは「水増し」が実際にありましたが、最近は(特に大手では)「水増し」は殆どないと考えてよいでしょう。ホームページやチラシなどに水増しした数値を載せていた事が万が一発覚すると、「景品表示法違反」で塾名公表・行政処分の対象になるリスクがありますので、大手塾で合格者数の「水増し」を行っているところはまずないと思われます。

しかし、塾業界特有の慣習やルールにより、(法的には問題なくても)分かりにくい表示になっているのは否めません。その結果、「実際の中学入試合格者数」より「大手塾の合格者数累計が上回る」という不思議な現象がよく見られます。

開成中学校の合格者数の例

首都圏男子校最難関の開成中学は、平成29年入試で定員300名に対して395名の合格者を発表しました。

一方で、大手中学受験塾の6塾が発表した開成中学の合格者数は以下となっています。

SAPIX:234名
四谷大塚:110名
早稲田アカデミー:95名
日能研:59名
浜学園:17名
希学園:8名

大手6塾の合格者数の合計は523名となっており、128名も「6塾発表の合格者数累計」の方が多くなっています。

塾業界の「合格者数」のルールは

そもそも塾が発表している「合格者数」の統一した基準はあるのでしょうか?

塾団体の一つである「全国学習塾協会」では「合格実績の適正表示」として以下のようなルールを加盟塾に義務付けています。

学習塾の適正な広告表示のために

(対象は)受験直前の6ヶ月間の内、継続的に3ヶ月を超える期間当該学習塾に在籍し、通常の学習指導を受けた者とする。ただし、受験直前に集中講義等を受講し、その受講時間数が50時間を超える場合には、在籍期間にかかわらず塾生徒とすることができる。

3ヶ月又は50時間の受講内容は、正規の授業若しくは講習でかつ有料のものでなければならない。体験授業・体験講習・無料講習・自習・補習等であったり単に教室内にいただけの自習時間等は含まれない。

「提携塾全体」「提携塾の一部」などに該当する場合は明示するものとする。

塾業界の団体は沢山ありますので、上記の団体に全ての私塾が参加しているわけではありませんし、法的拘束力もありませんが、行政がこのガイドラインについてある程度関与していることなどから(加盟していない塾も含めて)多くの塾が上記のガイドラインを合格者数公表の際に参考にしていると思われます。

ガイドラインがあるにも関わらず、何故、「私立中学校の合格者数」よりも「大手塾の合格者数累計」の方が多くなるような事がおきるのでしょうか?考えられる主な理由を分析してみたいと思います。

可能性1)入試直前に転塾した

ガイドラインでは「受験直前の6ヶ月間の内、3ヶ月又は50時間以上在籍」が「塾生」の対象となりますので、受験前3ヶ月前後に転塾した場合は、2つの塾で合格者数としてカウントされる可能性があります。もっとも、やめた塾が(合格校の)追跡調査をするケースは少ないと思われ、このケースはあまりないでしょう。

可能性2)他塾の「志望校別コース」「入試直前コース」などに参加した

普段はA塾に通い、週末にB塾の「志望校別コース」などに参加するケースです。この場合、上記ガイドラインの「受験直前の6ヶ月間の内、3ヶ月又は50時間以上在籍」の条件をクリアしていますので、A塾・B塾の合格者数としてダブルカウントされることになります。

「志望校別コース」で定評があり人気があるのが早稲田アカデミーの「NN(何がなんでも)志望校別コース」です。6年生後期からスタートするプログラムです。日能研などの他塾からの参加者も多い人気プログラムとなっています。割合は定かではありませんが、早稲田アカデミーの合格者数の一定割合は「NN志望校別コース」の参加者であると思われます。

可能性3)提携塾の場合にダブルカウントされる

四谷大塚の合格者数を公表しているホームページには、以下のような記述があります。

合格者数は、四谷大塚ネットワーク(四谷大塚・YTネット・四谷大塚NET)に継続的に在籍し、四谷大塚が開発した教材及び教育システムで学習した生徒を対象として集計しております。なお、講習生や公開テスト生などは、一切含んでおりません。

上記によると四谷大塚の直営教室の生徒に加えて準拠塾の生徒も合格者数に含まれていることになります。準拠塾の中には、早稲田アカデミーも含まれます。

開成中学の合格者数は

四谷大塚:110名
早稲田アカデミー:95名

となっていますが、「早稲田アカデミー」の合格者の中にはNNだけの参加者が含まれ、「四谷大塚」の合格者の中には「早稲アカ」生が含まれていることになります。NNだけの参加者などは「四谷大塚」の合格者の中には含まれていないと思われますが、どのような基準でどの程度の「早稲アカ」生が含まれているかは分かりません。

中学入試の合格者数についての感想

大手塾に合格者数の水増しなどの不正行為はないようですが、「分かりにくい」というのが率直な感想です。

「早稲アカ」の「NN」は非常によくできたプログラムで、これに参加しなければ合格できなかった受験生も一定割合いると思われますので、(合格者数に含める事自体は)不適切だとは思いません。

又、四谷大塚については、元々が「(直営教室がなく)日曜教室を四谷大塚が行って、普段は準拠塾で学習する」というスタイルだったことを考えると、こちらも(合格者数に含める事自体は)不適切だとはいえないと思います。

しかしながら、塾選びをする保護者にとっては分かりにくいのは事実ですので、「早稲田アカデミーのNN生のみの合格者数」「四谷大塚の直営教室の合格者数」を発表して頂けると非常に良いと思いますが、いかがでしょうか。

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